時刻表2万キロ
- 作者: 宮脇俊三
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1980/06/01
- メディア: 文庫
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珍しい車両や綺麗な車両, 新しい車両を観るとちょっとテンションが上がったり, 遥か遠くの駅に降り立つときに感慨深くなったり, 旅行において目的地での行動と負けず劣らず(鉄道に限らず)移動の過程を楽しんだり, その程度に鉄道が好きではあるが, 時刻表を定期購読していたりはしないし, ○○駅を○時○分に発車する○○線の車両はモハ○○だとかソラで解説できたりすることはない, さらには「鉄道に乗るため」に旅行をしたこともない. その筋の人達から見ればほぼ鉄分ゼロであろう.
さて, その筋の人にも「乗り鉄」とか「撮り鉄」とか全然行動パタンの違うカテゴライズがなされているらしい. そういった意味で, 宮脇俊三は「国鉄全線制覇」や「最長片道切符乗車」などを達成する, まさに「乗り鉄」の元祖なのであろう. そして本書は, この「国鉄全線制覇」を達成するまで(最後の数百線分)を綴った旅行記である.
世に出す文章を書くのだからと, 取材費用と潤沢な時間を豪勢に使って片っ端から未乗区間を制覇していく, などという野暮なことはしない. 出版社勤務の傍ら, 週末の僅かな時間を利用して(恐らく私費で)少しずつ路線を潰していく. だから, 時刻表を詳細に読み解き, 綿密な乗車スケジュールをたてて, 限られた時間で盲腸線をハシゴするのである.*1 当然, アクシデントで予定が崩れ, 予定の区間を完乗できなくなり, 泣く泣く次の機会までおあずけ, などということもある. 田舎の鈍行に揺られ, のどかな景色で綴られているにも関わらず, 実は波瀾万丈のジェットコースター・ムービー並の冒険譚なのである. そのギャップが面白い.
昭和五十年前後にはこんなにも沢山の夜行列車や寝台列車が走っていた, ということにすら驚いているド素人なのだが, この本を読んでいると週末に電車に乗って行ったこともないようなところに無性に行ってみたくなる. 俄鉄道マニアを増やす本である.
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