倫理学101問
相対主義(relativism)とは、主義主張や思想哲学には絶対的なものはなく、その正しさは時代や地域などによって異なる相対的なものとする考え。
Wikipedia
という意味では, 僕は完全に相対主義者である. 相対主義を否定する思想をも許容するのか, とか質問されれば「パラドキシカルで面白いね」と逃げる程度の相対主義者である. 一方で, 深いことを考えなければ, 相対主義は絶対であると思っているフシがある. もちろん, すぐに矛盾することは自覚している.
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例えば, イスラムの女性差別を(恐らく相対主義にもとづいて)擁護するニーナ・ローゼンスタンドの論を「浅はか」と断じている*1が, これは議論の大前提としてイスラムの価値観を否定しているように感じる. この点について二点ほどよく解らない部分があって, 一つは「倫理学とは絶対的存在である「倫理」というものの存在を前提としているのか?」, もう一つは, もし絶対的倫理というものを仮定したとして「(古代ギリシアやイスラム諸国に対して)現代西洋諸国の倫理観こそが求めるべき絶対的倫理に近いとする根拠はあるのか?」ということである. 相対主義者のワタクシとしては, とんだ思い上がりにしか感じられぬのである. そして, この本の中には著者のそういった気分が滲み出しているような気がするのである.
「絶対的倫理感の存在」などという前提は, 僕には酷く非現実なものに思える. 絶対的な論理の存在すらかなり疑わしいというのに, 倫理的価値観に絶対なものがあるとは到底思えないのである*2.
ともかく, 倫理とは一体何なのか, 倫理学は一体何を求めているのか, はこの本を読んでもよく解らなかった(信じ難いのだが, 本当に絶対的倫理感を求めるのが倫理学の目的なのだろうか?それとも, 「倫理とは現代欧米の道徳的価値観」ということなのだろうか?)が, 「倫理とは何なのか」を考える契機と多くの材料は含んでいる.
追記
やはり, 著者が「浅はか」と断じていたのは, 「歴史が長いから認めるべき」という理屈に対してだったらしい. その後「イスラム」の説明において, 「西洋人から見れば」女性に対して圧制的に見えるだろう, と相対的な表現を使っている. 他にも, 著者の価値観を大前提としたような表現であると感じた部分がいくつかあったのだが, それらも読解力不足によるものかもしれない. という気がしてきた. まあ, いいや.
それでも勿論, 倫理学は「絶対的倫理観」などというものを探そうとしているのか?という疑念は拭えていない. その辺は, 他書にあたってみなければいけないのだろうな.
追記2
ジレンマ81は衝撃的である. 有名な話?
ジレンマ92, 93は, 光市のあの事件の裁判を思い出させる. こういう弁護は伝統的文化なのであり, まさに「歴史があるから認めるべき」の反例である(あくまでも個人的見解).
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