フィボナッチのうさぎ
- 作者: キースボール,Keith Ball,佐藤かおり,佐藤宏樹
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2006/12/01
- メディア: 単行本
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恥ずかしながら知らなかったピックの定理*1にまずは感動し, 統計の話で退屈した後, フィボナッチと黄金比と連分数の話が怒濤の盛り上がりを見せる. フィボナッチと黄金比の関連を述べる本は(パパスも含め)沢山あるが, この8章の内容の豊かさと無駄のなさと話の流れの良さは抜群に素晴らしい. その後, この章の内容を踏まえて解析的代数に関するいくつかのトピックが紹介される. (細部に納得しかねる表現はいくつかある*2ものの)直感的なイメージを豊富に散りばめて解説している点も素晴らしい(娯楽数学本なんだから当り前っちゃ当り前).
後半は学部数学程度の解析の知識を要求している(さらに, 話の流れを優先しているためか, テクニカルな内容はちょいちょいすっ飛ばされる)ので, 慣れぬ人にはヘヴィかもしれないが, 個人的にお勧めする2章と8章は高校数学程度で充分理解可能*3であろう. この二章を読むだけでも充分価値のある一冊だと思う.
ちょっと(解析的アプローチに拘らず)代数をもう一度勉強してみたいな, と思ってしまった. 思う壺である.
追記
そういえば一点, 書き忘れていた.
この本はあくまでも「数学好きのための本」である. そもそも数学(とくにその抽象性)に馴染めぬ人には恐らく納得いかぬ内容である. なんでもかんでも抽象化したい, そういう「数学バカ」(もちろん誉め言葉のつもりである)のための本である.
例えば, 比較的有名な「クラスに誕生日が同じペアがいる確率」の話. 具体的な人数を提示しておいて, そのクラスに関する具体的な確率を求めるという話で始まるのだが, いきなり一般式を立て, それを具体化することによって目的を達成している. もちろん, 抽象化することによってはじめて数学的に扱うことができるわけで, 話はその一般式を解析する方向で進むのだが, それにしても「具体的な値」を求めようとして「いきなり一般化する」気持ちは数学バカ以外には理解できぬのではないか, とも思うのである.
関連図書
Symmetry (Princeton Science Library)
- 作者: Hermann Weyl
- 出版社/メーカー: Princeton University Press
- 発売日: 1983/01/21
- メディア: ペーパーバック
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A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)
- 作者: Kenneth Ireland,Michael Rosen
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An Introduction to the Theory of Numbers (Oxford Science Publications)
- 作者: G. H. Hardy,Edward M. Wright
- 出版社/メーカー: Oxford Univ Pr
- 発売日: 1980/04/17
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