パプリカ

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

SF + 恋愛 + サスペンス + 戦争 + 科学啓蒙, に, 「筒井康隆」をこれでもかというくらい振り掛けて仕上げた一品. 所謂「夢オチ」も筒井にかかればこうなる, ということ.
個人的には, この作品は科学倫理的なテーマをたっぷりと含んでいる, と感じた. ただ, 科学技術そのもの, とその濫用を区別せず(できず, というべきか), 潜在的危険を含むような全ての科学的研究をマッドであると切り捨てる阿呆なマスコミ連中とは, 当然の如く一線を画しているわけで, 悪用される技術, とそれを悪用する意思, という, 当然区別されるべき二面を正しく区別し, 前者を擁護している(と勝手に読んだだけなわけだが)あたりは, さすが筒井康隆である.