二月−三月 分数アパート(monkey business 2008 Spring vol.1より)

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

積ン読専門家としては, 「定期的に雑誌を買って, その中の小説を読む」などという高尚な行いとは縁がないものと思っていたのだが, この柴田元幸責任編集の「monkey business」だけは避けられなかったのである.
柴田元幸については, 何故かほとんど訳書を読んだことがなく(↓のユアグローの短篇くらい), ほとんどエッセイしか知らぬのだが, 氏が責任編集となると良い匂いが漂ってくるのである. で, 目次を見れば案の定, というか想像以上の凄ぇメンツ. 川上弘美, 小川洋子, 岸本佐知子にユアグロー(さらに classics と銘打って尾崎翠の「第七官界彷徨」まで)… もう「オモチャの缶詰」並の魅力である.
川上弘美, 岸本佐知子ともに(超)短篇の連載のようだが, なんといっても岸本佐知子の小説が読めるのである(もしかすると初?), これを買わずして何を買おうか. タイトルの「二月−三月 分数アパート」からなんとも岸本ワールドなのだが, 冒頭が,

ワタシには小さな弟が一人いて, ワタシの右腰の後ろのあたりから生えている.

もうメロメロである. さらに畳みかけるように「分数アパート」のくだり. 完璧である.
かねてから, 岸本佐知子の文章には, 川上弘美「椰子・椰子」の世界観がダブる, と思っていたのだが, まさにそれを実証したような文章である. たまらん.
久々に, はやく次号が読みたい, などとマンガ誌を読む少年のような気持ちである.

関連図書

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