坊っちゃん

坊っちゃん (新潮文庫)

坊っちゃん (新潮文庫)

明治くらいの定番小説を読んでみよう企画の一環. 漱石は, 昨年の「吾輩は猫である」に続いて二冊目(正確には大昔に「こころ」も読んだような読んでないような).
漱石読むならまずは坊っちゃん」ということになっているらしい. なるほど, 軽〜い小説を読むような気分で笑いながら読める. ストーリーも, 絵に描いたような勧善懲悪. ここに文学の「芸術性」を見出すことは, 素人には難しい. しかし, エンターテインメントとしてはさすがにめちゃくちゃ面白い. 百年以上前にこんな小説が書かれていたことを知った上で, 新たに娯楽小説を書くのは結構な根性が必要なのではないか, と思う.
そう, 百年以上前である. にも関わらず, 「赤シャツ」や「野だ」の嫌らしさも, 「山嵐」の気の良さも, 「うらなり」の頼りなさも, そしてそれら登場人物の関わり合い方も, 読んでいて全く違和感がない. これが近現代小説の典型であって, 様々な娯楽小説を通して「小説の登場人物というのはこう動く」というパタンとして理解しているだけなのかもしれないが, それにしたって, 大多数の日本人の根底のところの価値観は, 社会制度の近現代化には大して影響されずに百年間変わっていない, ということだろう. 思わぬところで「マシアス・ギリ」の話と繋がったような気がして面白い.

関連図書

吾輩は猫である (新潮文庫)

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